女スパイとオセロ王子
「きゃ!びっくりしたぁ」


気づいたあたしが下がろうとするより一歩早く、

女の子は大げさに驚いたフリをして素早く男の後ろに隠れると、男の腕に控えめに触れた。


この“控えめ”が重要。


柔らかそうな白くて細い指の先には、きれいに形の整えられたピカピカの爪。

大きくてくりくりの色素の薄い丸い瞳と、

低くはないけど小さい鼻。

主張しすぎない唇は、つやつやと淡いピンク色。


近づくと、かすかに甘い匂いがした。


頭のてっぺんから足の先まで、どこにも手を抜くことのない、


女の子の中の女の子。


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