私は彼に愛されているらしい
「お待たせしました、お誕生日お寿司ケーキでございます。」

「え?」

状況が読めていないアカツキくんにしたり顔で笑ってしまう私がいたりして。

新たに机に並べられたのは、おおよそ2、3人分程の大きさのお寿司ケーキだった。

サーモンで作られた薔薇の花、金糸玉子のじゅうたんに大葉の飾り、断面を見る限り海鮮が重ねられた海の豪華ケーキだ。

そしてお皿にはおそらく海苔で書かれたHAPPYBIRTHDAYの文字がある。

「え、え?」

アカツキくんは本気で驚いているようでうまく言葉もでないらしい。

ケーキと私、店員さんの間で忙しく視線が泳いでいる。

こんなアカツキくんを見るのは初めてかもしれないな、そう思うとちょっと勝った気がして嬉しくなった。

いつも振り回されている仕返しって訳じゃないけどね。

「では、お客様のおめでたい日を祝って!心を込めて歌わせていただきます!」

襖の向こうには他にも店員さんが3人ほど立って一斉に口を開けた。

「ハッピバースデートゥーユー!」

手拍子付きで始まったショーにアカツキくんは思わず拳を口許に当てて見入っている。

表情を見る限り、うん大丈夫、笑ってるっぽい。

このパフォーマンスに度肝を抜かれつつもテンションが上がっているようだ。

順調に歌が進んでいくなかで状況を把握してそう。

「おめでとうございましたー!」

最後の一声を叫ぶと店員さんたちは一斉にクラッカーを鳴らして去っていった。

残された部屋の中の2人は微かな火薬の臭いと沈黙に包まれる。

さすがに最後の仕掛けには。

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