私は彼に愛されているらしい
そして目を見開く。

「…前に欲しいって言ってたの覚えてたんだ。気に入った?」

緊張から反応を待ちきれなくて私から声をかけたけど、言葉なく手元にある本を見つめたままアカツキくんは動かなかった。

その反応はどう捉えたらいいのかな。

「…うそ。え、これどうやって?」

少しして出た声にほんの少し背筋が伸びる。

「出版社に直接問い合わせたの。」

「マジで?え…ちょ…マジで?」

珍しく言葉に出来ないくらいに平常心を失なったアカツキくんはすっかり本の表紙に釘付けた。

その本は前にアカツキくんが欲しいと言っていた車専門誌のバックナンバー。

どの書店にも置いていないこの本を手に入れようと色々なところを回ったが見つからなかったと落ち込んでいたのを覚えている。

それはアカツキくんが憧れた車が大特集されている回の本でネットオークションでは既に高値がついていた。

散々悩んだ挙げ句に諦めたのを近くで見ていたんだ。

「うわ、すっげ…。」

興奮した面持ちで本をめくりながらソファに座るとそのまま読み込む体勢に入る。

笑ってはいない、でも目を輝かせてページを捲るその姿からは喜んでくれているのだと十分に伝わってきた。

良かった。

安心して私も自然と顔がほころんでしまう。

邪魔をしないように静かに動き、荷物を置いて飲み物の支度をしようと台所に向かった。

良かったな。

何度も心の中で呟いてその度に笑った。

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