涙の色
 彼は今日もまた色味のない一日を作り笑いで過ごし、ベッドに潜った。

 長い年月をかけて宇宙の外れからやって来た小さな光が、夜空にまたひとつ色を足した。
彼は玄関を叩く微かな音で目を覚ました。

 玄関を開けると、飛び出したきり連絡がつかなくなっていた彼女がそこに立っていた。

 彼はしばらく真っ白な頭が回らなかったが、彼女もまた鮮やかさが抜けているように感じた。

 彼は彼女を部屋に入れた。
彼はしばらく立ち尽くしていたが、やがて玄関を閉めた。
彼女は夜によって黒く染められた部屋を眺めていた。
彼はベッドに向かった。
彼女は暗闇の中を器用に歩いて彼に続いた。
彼はいつかのように左側を一人分空けてベッドに入った。

 彼女は彼の左側に入った。
しかしそれ以上あの頃のような事はなかった。

 二人の間に真っ黒な夜が流れた。
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