私と彼と――恋愛小説。
頷いてスタジオを出た。佐久間もスーツ姿で、二人で歩けば女達が振り返るだろうと思えた。
「さて――お嬢様は後ろにどうぞ」
丁寧に佐久間が白のベンツのワンボックスの後部ドアを開ける。なんだか照れ臭い気分で車に乗り込んだ。
広すぎる後部座席は少し居心地が悪い。
「最初は…杏奈さんの会社だなぁ」
助手席の佐久間がそんな風に呟く。
「昨日電話がありました…やっぱり杏奈も同席するそうです…」
「加奈子ちゃんには悪いけど…楽しみだね。杏奈さんがどんな顔するのか」
「そうだったわね。お友達と口裏は合わせてあるの?」
「ええ、カヲルも佐久間さんも初対面だからって言い含めてあります」
本社ビルの場所は知っていたけれど、中に入るのは初めてだ。都心に自社ビルが建てられる程順調なメーカー、うちの出版社とは大違いだ。
広いロビーを佐久間もジュンさんも背筋を真っ直ぐに伸ばして、堂々と受付へ向かう。
後ろを歩くだけで気後れしそうになる程に絵になる光景だった。
案の定、すれ違う人は彼らに視線を向ける。
「さて――お嬢様は後ろにどうぞ」
丁寧に佐久間が白のベンツのワンボックスの後部ドアを開ける。なんだか照れ臭い気分で車に乗り込んだ。
広すぎる後部座席は少し居心地が悪い。
「最初は…杏奈さんの会社だなぁ」
助手席の佐久間がそんな風に呟く。
「昨日電話がありました…やっぱり杏奈も同席するそうです…」
「加奈子ちゃんには悪いけど…楽しみだね。杏奈さんがどんな顔するのか」
「そうだったわね。お友達と口裏は合わせてあるの?」
「ええ、カヲルも佐久間さんも初対面だからって言い含めてあります」
本社ビルの場所は知っていたけれど、中に入るのは初めてだ。都心に自社ビルが建てられる程順調なメーカー、うちの出版社とは大違いだ。
広いロビーを佐久間もジュンさんも背筋を真っ直ぐに伸ばして、堂々と受付へ向かう。
後ろを歩くだけで気後れしそうになる程に絵になる光景だった。
案の定、すれ違う人は彼らに視線を向ける。