私と彼と――恋愛小説。
「まあ、ビジネスとしては当然の事だ。佐久間くんの活躍は知っているが…」


会長はちらりと佐久間に視線を向けて微笑み、話を続けた。


「とくにねぇ。CMとは違い映画などと云うものは投資としては水物だ。如何に佐久間くんを信用してもリスクは軽減しなきゃいかん…」


「それでうちの会社を調べて、私の事もお知りになった…」


「そう云う事だ。今回の出資の決め手は――君だよ。大友くん」


「ありがとうございます…と言うべきですね」


「そうだな、まあ一度うちの会社の事も是非相談にのって欲しいね」


「買い被り過ぎですよ…」


「そうかな?まあ良い、天才と天才が手を組んでるんだ。失敗しない自信があっての事だろう?」


会長には最初に見えた人懐こい笑みは見えない。ビジネスの世界で生き抜いている凄味すら感じる。


「おっと、こりゃいかん。せっかく謎の美人作家に来て貰ったのに脱線してしまったぞ」


場の雰囲気を察して会長が戯けて見せる。それっきり澤田会長はジュンさんに話題を振らなかった。


カヲルの私に幾つかの質問と雑談をして最後に気さくな笑顔で告げた。


「カヲルくん、そのうちこの連中に内緒で飲みにいこうな」
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