私と彼と――恋愛小説。
疲れた…とにかく佐久間に振り回された一日が終わったのだ。


編集部に戻り打ち合せを終え、帰宅したのは十一時近く。冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出して喉に流し込んだ。


まだ暖房も効いていない部屋で飲むビールは身体ごと冷やしそうだったけれど、飲まずにはいられない気分だった。


『悪いね。俺、次のアポがあるから明日にでも連絡入れる』


佐久間はさっくりと、今の出来事など過去だと言わんばかりの態度でスタジオから飛び出して行った。


創刊迄二ヶ月、紙面の企画はとうに走り出している。私にしても〈カヲル〉だけに関わっている暇もない。


キャリアが長いとは云え、大半を文芸畑で過ごしてきた編集長にも不安はある。


女性向け雑誌などいくらでもあるのだ、創刊されては消えてゆく中で生き残るだけでも大変な事だった。


広告と申し訳程度の記事に、ブランドと交渉してバッグやポーチを付ける…記事やコンセプトなどどうでも良い雑誌にはしたくなかった。


流行も最新の情報もネットには敵う筈もない。それでも雑誌にしか出来ない事はあるのだと思いたい。
< 27 / 269 >

この作品をシェア

pagetop