私と彼と――恋愛小説。
持ち帰った資料に目を通し手直しする。明日のスケジュールを再確認して漸く眠りにつく準備を始めた。


読み捨てられる雑誌の影にどれだけの人々が関わり、苦悩し疲弊している事を殆どの人々は知らないだろう。


拘り質の高いものを作ったところで、売れなければ紙屑同様の価値しかない。


結果だけが全てであって努力など意味を持たない世界…それが出版の宿命なのだ。


少なくとも〈カヲル〉の存在は差別化と云う意味でも大きいものだ。


これまで目を付けた出版社の担当が悔しがる光景が目に浮かぶ。


そんな事を考える自分が時折下衆に思えてしまう。けれども企画が当たり反響が販売に現れた時の喜びは経験してみなければわからないだろう。


頭が冴えて眠りに付けない。いつもの事だけれど嫌になる。こんな時に考えてしまうのは、私は今のままで良いのかと云った漠然とした不安だ。
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