私と彼と――恋愛小説。
「何の用じゃないだろう!〈カヲル〉の事だ。お前らだけで独り占めはないだろ!」


佐伯は谷女史の座るデスクの横で大声を張り上げた。


「知りませんよ、そんな事。ご自分達で何とかなされば良いじゃないですか。うちの部員が怖がってるんで、いい加減にしてくれませんかね。みっともないですよ」


佐伯は苦々しそうに私を見る。別に私怨で言っているわけではない。


佐伯の態度があまりにも見苦しいのだ。実際、どうしてこの男に騙されていたのか不思議だった。


今ではあの代理店の女に感謝したい気分だ。佐伯は周りを見渡して冷静になった様子だった。


当然の事だろう。誰もが冷たい目で佐伯を見ているのだ。


「と、とにかく又頼みにくる。悪かった…」


そそくさと背を向けて部屋を立ち去った。フロアが違うだけでも気が楽だ。


「加奈子…ちょっと打ち合せ。みんな、少し出てくるから頼むね」
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