誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「キタキツネだ。こんなところにも住み着いているんだね」


 佑典がキツネが森の縁を走り去っていくのを、目で追いながらつぶやいた。


 そういえば和仁さんと初めてドライブして、浜辺に連れて行かれたときにも、キツネの親子がいたのを思い出した。


 「理恵、父さんとは絶対に付き合わないほうがいいよ」


 「え・・・」


 佑典の突然の一言に、私は凍りついた。


 バレている?


 佑典は知っている?


 私と和仁さんとの関係を・・・。


 「わ、私が付き合うってどういう・・・」


 混乱を静めながら、とりあえず聞き返した。


 「えっ、もしかして本気にした?」


 逆に佑典が驚いている。


 もしかして冗談?


 それとも私を試した・・・?


 「まさか俺が、大切な理恵を父さんなんかに差し出すわけないよ」


 私がとんでもない勘違いをしたかのように、佑典は笑い飛ばした。


 「だって、佑典が変なこと言うから・・・。だったらどうしてそんなこと口にしたの?」


 「たとえばの話だよ。父さんだったら動物なんか見かけたら、恋人でさえ放り投げてカメラ片手に追いかけて行きそうだから」
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