誘惑~初めての男は彼氏の父~
 喫茶店でケーキと紅茶を味わった後、かなり長い間窓辺の席で語り合っていた。


 夕暮れが近づいてきたのを、窓から差し込む光の角度で知り。


 会計を済ませた和仁さんの後に続いて、私も店から出た。


 そして再び海辺へ向かう。


 和仁さんは荷物の中からカメラを取り出し、再び撮影を始めた。


 そろそろ夕刻。


 日没時間は、十八時よりも手前。


 秋の日の入りは日に日に早まっている。


 例年より残暑が多い年ではあるけれど、地球の公転は着実に秋の訪れを示している。


 私は撮影に夢中になっている和仁さんの後姿を、黙って見守っていた。


 何かに夢中になっている男の姿を、傍らでそっと見つめているのが好きだった。


 ・・・でも今日は。


 自分も何かに夢中になってみたい気がして。


 和仁さんの真似をするかのように、私も携帯カメラで沈み行く夕日を撮影し始めた。
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