誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「理恵のビール、琥珀色してるね」


 「はい。ペール・エールですから」


 「paleって、淡いとか薄いって意味だよね。それ、好きなんだ?」


 「そうですね、大学に入ってから飲み会で偶然口にして以来、何となく」


 「ちょっと飲ませて」


 「あ」


 私のジョッキを強引に奪った。


 「香りはフルーティで・・・。ほのかな甘みと微妙な苦味があるね」


 「そうなんです。そのちょっと変わったところが、普通のビールっぽくなくてお気に入りなんです」


 「・・・今後このビールを飲むたびに、理恵を思い出しそうだな」


 「どういう意味でしょうか」


 ジョッキが戻され、その後も変わりなく飲み続けた。


 私は飲めるほうだし、自信があったので。


 自分でも飲みながら、和仁さんに絶え間なく次の一杯を進めて、先に自分が酔いつぶれないようにだけ気を配った。
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