誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「夜風が心地よいですね」


 平気なふりして歩いていた私は、そこにあったブランコにもたれるように座り込んだ。


 鎖をしっかり握り締め、転げ落ちないように。


 「かなり酔ってるね」


 「酔ってません」


 「ごまかしても無駄だよ」


 和仁さんの手が私の頬に触れ、そのまま屈んで・・・唇に触れる。


 「もう・・・」


 だめです、と言おうとしたのだけど、言葉が続かない。


 体の向きを変えると背中から抱きしめられ、その唇が首筋に、その手は胸に触れる。


 酔いも手伝って、意識が琥珀色の闇の中に・・・。


 「見てごらん。隣の建物がペール・エール色してる」


 「・・・?」


 顔を上げて、公園に隣接するレンガ作りの倉庫を見つめてみた。


 レンガの壁が街灯に照らされ、不思議な色彩を呈している。


 ちょうどまるで、ペール・エールの色・・・琥珀色のような。


 ヌード撮影の件、携帯のカメラで撮った画像の保存方法、さっきのビールの話。


 話題はたくさんあるはずなのに、意識が渦を巻いてきて自由にならない。


 「和仁さん、」


 琥珀色の霧に包まれたような世界から逃れたくて、何か話題を振ろうと思っても・・・見つからない。
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