誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「もういや・・・」


 散々私をじらすその唇と指先から逃れようと、一瞬の隙に私は背を向けた。


 「我慢しなくていいよ」


 私の脇腹から腰のラインを撫でるように触れながら、和仁さんは告げた。


 「もっと声を聞かせて・・・。他に誰もいないんだから」


 再び体の向きを変えられた。


 暗闇に慣れてきた目が、和仁さんの綺麗な顔を映し出す。


 「そろそろ・・・いい?」


 「・・・」


 私は何も答えなかった。


 無言がYesの合図のつもりだった。


 けれど・・・。


 「必要とされていないのは寂しいな・・・」


 急にその手の動きが止まった。


 「何も求められていないのに、強引にしているようで。これじゃ襲っているみたいだよね・・・」


 あと一歩というところで突然やめられたので、私は戸惑った。


 「なんかむなしいんだよね」


 和仁さんは私から、完全に体を離した。


 「待って」


 そんなの演技だと十分に承知しているのにもかかわらず。


 私は和仁さんの腕を掴んだ。
< 252 / 433 >

この作品をシェア

pagetop