誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「どうした?」


 「・・・」


 やめないでと告げたいのに、恥ずかしくて口に出せない。


 「分かってるよ」


 苦笑を浮かべて和仁さんは、再び私に体を重ねた。


 「そんな寂しそうな顔しなくていいよ。素直に言ってごらん。僕にもっと抱かれたいって」


 「私・・・」


 「言ってごらん。欲しい、って」


 口にすることができなくて、私は和仁さんの下で黙り込んでしまった。


 「僕が欲しくない?」


 「いえ・・・」


 「ならば欲しい?」


 「・・・」


 「・・・素直にならない悪い子は、もっともっとお仕置きだよ」


 「あ・・・」


 また先ほどのように、指先が私をかき乱す。


 「どうする?」


 「・・・」


 「欲しい?」


 「はい・・・」


 「いい子にはご褒美をあげる。せっかく僕が欲しくて、泥棒のような真似までしてくれたんだから」


 まずは優しく唇が触れた。


 それだけでも十分なはずなのに、もっと深くまで感じ合うことを望んで。


 私は自ら、和仁さんを受け入れた。


 これが「愛」と呼べる行為なのか、未だ分からないままに。
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