誘惑~初めての男は彼氏の父~
***


 「和仁さん・・・」


 日没からかなりの時が過ぎた。


 電気もついていないこの部屋、窓から注ぎ込まれる月明かりだけが頼りだった。


 気づいたら和仁さんは眠りに落ちていた。


 これまでにもないくらいに強く求め合った後。


 甘く絡まるキスを重ねている間に・・・。


 回数を重ねれば重ねるほど、ますます欲張りになっていく自分が怖い。


 この人が彼氏の父親でなければ・・・とさえ考えてしまう。


 恐ろしいことを考えてしまう自分が怖い。


 なのにベッドの上で私は一人、先ほどの余韻に浸っている。


 ・・・シャワーを借りようと思い立ち、気だるい体をベッドから引き離す。


 この体のままでは帰れない。


 ただ、シャワーを浴びている間に佑典が帰宅したら終わりなので。


 時間稼ぎができるよう、玄関の施錠にチェーンを加えた。


 チェーンは外部からは外せない。


 そして安心して、シャワーを浴びることができた。


 何もかも洗い流した後、シャワーを終えた時、排水溝に流れ落ちた髪の毛はすべて除去した。


 女の長い髪が残っていては、佑典に変に思われる。
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