誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「・・・これからどこへ行きたい?」


 食事の後もデザートを食べたりして、結構長居した。


 店を出て助手席に乗り込みシートベルトを締めた時、尋ねられた。


 「私・・・」


 「ん?」


 「家がいいです」


 「ずいぶん昼間から大胆だね」


 発車させた直後の和仁さんは、苦笑した。


 「いえ、そういう意味ではなくて。今日に限っては下手に出歩くのは危険だと思ったので」


 「そういえばそうだね。今晩佑典はすすきので飲み会だし、街をうろうろすれば偶然遭遇する危険性がある」


 そろそろ佑典は準備を済ませ、家を出てバスに乗り込み、オーケストラ部の謝恩会会場に向かっている頃。


 徹夜で飲むだろうと話していたので、今夜は遅くなるかもしくは帰ってこない。


 謝恩会の会場は聞いているけど、二次会会場は不明。


 街で和仁さんと一緒にいれば、どこで遭遇するか分からないので、逆に家にいるのが安全に感じられた。


 「僕も機材を車から降ろしたいし。家に行こうか」


 車にいつまでも、高価な機材や重要なデータを積んだままにしておきたくなかった和仁さんも同意した。


 盲点というか、謝恩会の間は絶対に帰宅しないのだから安全圏。


 そう確信して車のシートに身を委ね、午後の国道を北へと向かった。
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