誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・。


 近所のお寿司屋さんから出前を取った。


 「近場にこんな美味しいところがあって助かってる。来客があった際などは、よく注文してるんだ」


 想像以上に美味しくて、


 「かなり高級寿司なんじゃないですか」


 「一番安いセットは、一人前千円未満だよ。これは超特、一番高いものだけど」


 おそらく数千円はするだろう。


 二人分なら五千円近く?


 それ以上かもしれない。


 この界隈では破格だ。


 同世代の友達との交流の中ならば、なかなか味わう機会のない世界。


 年上の、社会的地位や財力を有する人とでないと、体験することのできない・・・。


 「こんな高いもの、すみません」


 「理恵と過ごす時くらい、少々贅沢しても惜しくはない」


 「でも・・・」


 「そんなこと気にしなくていいよ。理恵は僕の隣で、美味しそうに食べてくれさえすれば、それだけで満足なんだから」


 そう言って和仁さんは立ち上がり、飲み物を用意し始めた。


 「ワインでいい?」


 「はい。・・・あれ、和仁さんは飲まないんですか?」


 グラスを一つしか用意していないのを見て、私は尋ねた。


 「急に理恵を送り届けなきゃならない可能性もあるから、飲むわけにはいかないんだよね」


 佑典は今夜は部活の仲間たちと、朝まで飲み明かすとの話だけど。


 予定が変わって早く終わったり、帰ってくる危険性もゼロではない。
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