誘惑~初めての男は彼氏の父~
 ・・・服を身につけて、来た時と同じ姿に戻った私は、ドアの向こうの気配を探った。


 門の外、停車中の車。


 タクシーかと思いきや、佑典のオーケストラ部の先輩の車だったらしい。


 卒業を祝う謝恩会にはOBも顔を出しており、酒を飲まない者は車で会場へと向かったのだろう。


 乗っていた者全員が車から降り、何やら騒いでいる。


 男女数人・・・普通乗用車なので最大限五人だと推測されるが、佑典の家の前で騒がしい。


 未明、辺りはまだ真っ暗で寝静まっている。


 高級住宅街ゆえ、家と家との距離は離れているが、エンジンの排気音など気になる人は気になるかもしれない。


 吐いたらすっきりするぞ、と誰かが言ってるのが聞こえてきた。


 佑典は酔っ払い、先輩の車でここまで送り届けられたのだろうか。


 和仁さんもそう予期して、息子を迎えに玄関を出ようとした。


 ところが、


 「先輩、うちなら大丈夫です。父さんがいるし。二人っきりってことにはならないので」


 佑典の声が響いてきた。


 酔いつぶれているどころか、しっかりとした口調だ。


 「任せていいんだな。後から騒動なんてならないよな?」


 今度は知らない男の声。


 これがおそらく車の運転手でもある、先輩だろう。
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