誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「お父さま。もう小難しい話はやめにして、」


 内村さんは再度、和仁さんに掴まれた腕を振り解き、佑典の正面へと戻った。


 「さっき約束しましたもんね、佑典さん? もうあんな不誠実な女に騙される日々は、終わりにするって」


 「内村!」


 内村さんはなおも続ける。


 「みんな言ってたじゃないですか、あり得ないって。恋人の父親と浮気する女なんて・・・。信じられない」


 オーケストラ部の内部では、そんな話になっているの?


 「内村っ。父さんの前でそんな話、やめろって」


 「そろそろ白黒はっきりさせるべきだって説教されて、佑典さんも納得してたじゃないですか! 海外赴任がいい転機になるって・・・」


 「・・・」


 「そうでしょう? 浮気女はお父さんに預けて・・・。私もいずれ大学を卒業したら、佑典さんについていきます。さっきみんなの前で誓った通りに」


 そう言い切った内村さんは、佑典に笑みを浮かべる。


 「佑典・・・。どういうことだ」


 私が彼氏の父親と関係を持っているのは事実。


 だけど話が大きくなってオーケストラ部で広まり。


 部員たちが寄ってたかって、佑典に私と別れるように強要し。


 その提案を佑典も受け入れ、私と別れる決意を謝恩会の席で口にした?


 加えて内村さんと交際宣言?


 突然の展開に私はパニックに陥ってしまった。
< 427 / 433 >

この作品をシェア

pagetop