誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「こんなこともあったっけな・・・。佑典がまだ子供の頃、後部座席に乗せて運転していたんだけど、ちょうど雨上がりの虹が綺麗で、車を停めて路肩で撮影を始めたんだ」


 「虹をですか」


 「結構長い間見えていたので、ひたすら撮り続けた。消えてから車に戻ったら、後部座席で佑典がグッタリしていた」


 「えっ」


 「車のエアコン入れ忘れていたのと、雨上がりに気温急上昇していて・・・。大変なことになるところだった」


 「熱中症だったのでしょうか」


 「今で言う熱中症だね。慌てて病院に担ぎ込んだら、医者にこってり叱られた」


 「・・・当たり前じゃないですか」


 「こんな感じで僕は、撮りたいと思うものが目の前に現れたら、夢中になって周りが見えなくなるんだ」


 そう告白して、少しはにかみながらカメラをいじる和仁さんの表情は無邪気で。


 「社会性がない」と評していた息子の佑典の言葉を思い起こしながらも、そんな横顔を可愛いとさえ感じてしまった。
< 93 / 433 >

この作品をシェア

pagetop