カノンの流れる喫茶店
彼が言うには、私の彼氏であることに疲れたらしい。

私の彼氏だということで受けるプレッシャーだとか、私自身へ対する気遣いだとか、そんなものに疲れたらしい。

私のことを嫌いになった……ということではないらしいけど。

そんな逃げ腰な言葉はほしくなかった。

別れ話なんでしょ。だったら……結局、私と彼の関係は、終わってしまう。

別れることを正当化するために、だれの責任だとか、なにが嫌になったとか、そんなことを並べないでほしい。

そう言ったら、彼は、呆気なく席を立った。

じゃあ、これでな、と、本当に呆気なく。

カウンターにひとり残された私は、横で、ミルクを入れられた挙げ句、飲みかけのままにされたコーヒーに、同情した。

アンタ、微妙な色になっちゃったねぇ。
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