囚われる心と体


定時きっちりに仕事を上がり更衣室で着替え恐る恐る正面玄関へ向かう。あの男は待ち伏せなんてしないだろうからそのまますんなり帰れるはず。




それでも細心の注意を払いながら早足でエントランスを抜けた。はずが、ガシッと掴まれた腕。嘘でしょ。見つかった?




怖くて振り向く事が出来ない。怒りに満ちた腹黒王子なんて恐怖以外の何者でもないわ。




「石原。もう帰んの?」




明るく話しかける声にホッとする。振り返ればワンコのようないつもの顔。でも内心はちょっとだけ気まずかった。嘘をついている事実があるから。




「うん。今日は早く帰りたくて」




「そっか…」




「どうかした?」




「いや、もし時間あったら飲みにでも行きたかったんだけど。でも無理そうだしいいや」




少し悲しそうな顔をする高梨。それが耳を垂らし悲しそうにご主人さまを見る犬に見えてしまいそこから立ち去れなくなる。




よく考えればこのまま家に帰ってもアパートを知られてしまった以上、腹黒王子に捕まる可能性だってある。




だったら高梨と飲みに行った方が安全じゃないかと計算した私は一緒に行く事を決めた。

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