天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 顔がメチャクチャ熱くて、一気に汗が出てきた。
 どうしよう、メイク崩れる! お願い、ここで負けるなファンデーション!
 お願い、晃さん。どうか早めにご返答お願いします。私もメイクも、あんまり持ちこたえられそうにないんですぅ!
 身悶えている私の姿をしばらく眺めていた晃さんは、ようやく楽しそうな声を出した。

「あれ? でも聡美さんって忙しいんじゃなかったっけ?」
「ヒマに、なりました」
「ふうん。いつから?」
「……たった今から」
「でも今、展示会期間中で忙しいから時間ないんじゃない?」
「でも24時間やってるわけじゃないですよ! コンビニじゃないんですから!」

 思わず叫ぶと晃さんは大笑いした。
 私はますます顔を赤くして、そんな彼を睨み上げる。
 う~。晃さんったら、この前の仕返しして遊んでるなぁ!?

「うーん、そうだな。でも、食事はね……」

 晃さんが急に思案顔になる。
 私の興奮はいっぺんに冷め、ズーンと沈んでしまった。
 仕事、忙しいのかな? それともだれかを誘っちゃったのかな?

「これ、なんだかわかる?」

 アキラさんは胸ポケットから、透き通る紫色のルース(リングなどの枠や台にまだつけられていない、カットされた石)を取り出して見せた。
 あ、紫水晶だ。

「アメジストですよね?」
「うん。アメジストの名前の由来はね、『酔っていない』って意味。古代ギリシャ人やローマ人は、酒の席にアメジストを身につけて酔い防止のお守りにしたんだ」
「へえ」
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