恋ごころトルク
 ヘルメットを脱いで、グローブとプロテクターを外す。


「お疲れさまですー」

 後ろから声をかけられた。振り向くと、1人の女性。ここで仲良くなった千里さんだった。あたしよりちょっと年上のお姉さんで、大型二輪の教習中の人だ。

「あ、千里さん。お疲れさまです。次の時間ですか?」

「いや、今日は予約だけ取りに来たの。そしたら、真白ちゃんらしき人が走ってたからさぁ。待ってたよ」

 楽しそうに言うその明るい笑顔を見ていたら、なんだか気持ちが安らいだ。

「ねぇねぇ、お昼ご飯誘おうと思ってたんだけど。この後、予定ある?」

「いいですね。あたしもう次回の予約取って終わりなんで。1時間だけだから。今日仕事お休みだし」

「2時間連続で乗るのきついよねぇ」

「きついですねー。でも乗れる時に乗らないと終わらないですもんねー」

 10時の教習だったから、終わってなんだかんだで11:30くらいになる。お昼ご飯にはちょうど良い時間だ。

 身支度を整えて、千里さんに待ってて貰い、次回の予約を取った。待合いスペースに戻ると千里さんが座って待っていた。

「仕事休みですか? 千里さん」

「うん休み。朝ご飯食べてこなかったからお腹空いたよー」

「どこ行きましょうか」

 入校手続きに来た時もそうだったけど、この辺、食べる店が……。

「ミナセに行こうよ。バイクショップの。あそこカフェあるんだって」

「……ミナセ」

 予想外の提案をされて、真顔になってしまった。ミナセか……。

「真白ちゃん、行ったことある?」

「は……はい」

 ここで嘘を言っても仕方がない。

 千里さんも自転車で来ている。2人で駐輪場へ行き、自転車で自動車学校を出る。ああ。昨日の今日でミナセか……できれば行きたくない。光太郎さんに必ず会ってしまうわけじゃないんだけど。なんか、気持ち的に……。

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