秘密が始まっちゃいました。




荒神薫。


転職してきて5年。

さいたま営業所に入ってきた時から、とにかく格好いいと評判だった。
今年の抱かれたい男投票は間違いなく彼がトップだろうと入社後すぐに噂になるくらい。

私が初めて彼を見たのは、彼が入社してふた月。
出張レポートの未提出が続き、直談判しようと本社会議にやってきた彼を捕まえた時だ。


「あ、いっつも連絡くれる望月サン?」


荒神さんは私を見下ろして、へらへらっと微笑んだ。

完全にこちらをなめきった笑顔だった。
私は眉を吊り上げて、レポートを今週中に提出するようにと厳命したっけ。


「了解―。声で想像してたけど、やっぱ美人だね」


セクハラと紙一重の言葉を残して彼は会議室に消えていった。
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