秘密が始まっちゃいました。
「日冴も来てくれるか?」


「なんで、私も?」


私はお鍋の前に戻りながら苦笑いする。
彼が私を頼る時は、たいてい裏に企みがあるのだ。
そんなのもう知ってる。
薫さんが言い訳するように言った。


「涙もろいのは家族も知らないって言ってるだろ?唯一知ってるおまえがいてくれたら、俺だって勇気を持ってだなぁ……。それに俺がひとりで結婚式の弁解をしたって、信憑性薄いだろ?」


その心配はない。
おそらく、産まれたての甥っ子くんを見たら、薫さんは号泣してしまう。わざわざ告白しなくても、彼の涙もろさは妹さんの知るところとなるだろう。

薫さんがなぜか、すうっと息を吸い込む気配がした。
そして、次に言われた言葉。


「そのついでというのは何なんだけど、うちの親に会ってくれない?」


私は料理の手を止めた。
ぶんと首をねじり、彼の顔を見る。

薫さんの顔はびっくりするくらい真面目だった。
< 352 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop