マー君2(原作)
柳橋は口ごもり、目を反らす。

一樹は再び校庭の方に顔を向けた。

「俺は悩んでませんよ。ただ・・・・・・失望しているだけです。

信じるとか、やればできるとか、そんな不安要素は人に迷いを生じさせるだけで、俺に理解できない言葉です」

「だから、信じないし、何もやらないと?」

「人間関係に置いて、そんな目に見えない非科学的要素は、信じるに値しないということです。

つまり、今先生を待ってる生徒達がいるという事実が、先生をせき立てるには十分な要因であり、これが俺が信じている偽りなき事実というものなのです」

一樹は興味なさ気に校庭で整列している生徒達を見つめていた。

その視線に気付いた柳橋が慌てて立ち上がり、取り乱す。

「って、もう授業始まってるじゃあないか! 一樹、話の続きはまた後だ」

柳橋は着ていた黒いジャージ姿のまま、急いで職員室を出ていった。

一樹はその後を、静かに見送った。

「見えない人の繋がり−−。そんな物、なんの意味があるという。

自己の欲望を優先する人間に、他人を信じ、理解することなどできるはずがない。

だから、俺はこんな所に−−」

小声で独り言を呟いている自分に気付き、一樹は頭を左右に振り静かに職員室を後にした。
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