おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
明けない朝はないっていうけど、どんな夜も必ず明けてしまう。



ほとんど寝ていない目は腫れて、あけるのも力を入れなきゃならないほどひどい。

10年分くらい泣いたからかのども唇もカラカラに乾いてる。

手は一晩中、陽とつないでいたせいか汗ばんでるし、腕がガチガチに固まってる。





「朝だね。何食べようか。」

毎朝お腹に心の中で語りかけてた習慣にまた涙が滲む。
これ以上泣いたら本当に血がでちゃう。






陽は、仕事に出掛けていった。
私を心配して、昼までに仕事を片付けて帰ってくるらしい。

いつもなら「大丈夫だよ。」と言えるけど、今日は心細くて仕方ない。

「早く帰ってきて。」って珍しく泣き付いた。





誰かとつながっていないと、壊れてしまいそうだった。






1日がボゥ~ッと過ぎていく。


私はただ、ソファに横たわり、流れる雲を眺めていた。




風は涼しくなってきて気持ちがいい。
夏の終わりを肌で感じて、また切なくなった。







昨日の夜は、泣いてる間に、まだ未練がましく赤ちゃんがどうにか救えないかスマホで検索していた。




心拍 停止 無事に……………


出てきたワードは、「次は大丈夫」とか、「流産は珍しくない」とか…なぐさめの言葉ばかり。



ああ…本当に無理なんだな………


このお腹にはまだ赤ちゃんがいるのに…









「…………電話…しなきゃな………」


大学病院からもらった流産についての封筒が投げ捨ててある。


現実を見なきゃ………

赤ちゃん…送ってあげなきゃ………








「麻那、大丈夫?」


ちょうど陽が帰ってきた。

時の流れがゆっくり過ぎて、いつの間にか太陽は西に傾いていた。

良かった…

一人で電話するのはつらすぎる。


意を決してボタンを押す。


つい3日前にかけた番号を………。
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