おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
陽が心配そうに見送る。

陽のその顔を見たら、もう病気も怪我もできないなって思った。




痛くないんだって。
麻酔で寝ちゃうから平気だよ。

何度言っても心配そうに、悔しそうに「本当に?」って聞いていた。




本当は恐いよ。
本当はつらいよ。


体じゃなくて、心がつらい。
手術室の異様な空気に本能が恐怖感を感じさせる。


何度手術しても、それは変わらない。




だけど、陽には心配かけたくない。


大丈夫だよって、口だけ笑いかけて、部屋を出た。













流産手術をうけるのは分娩室ではなく手術室。


同じ赤ちゃんをお腹から出してあげる行為なのに、生きていれば分娩室。
死んでしまっているのなら冷たい手術室。


私には生きていようが、死んでしまっていようが同じ大切な赤ちゃんなのに。




手術室に入った瞬間、その雰囲気に体が進むのを拒否する。



明るいけれど、部屋の中央のいかにも手術室…というベッド。
真上に見えるのはドラマでしか見ないような大きな電器。




……恐い………




足が止まる。




「おはようございます。」
「ベッドの上に寝てくださいね。」


昨日の看護婦長さんと、先生が手術用のかっこをして待っていた。



恐いよ…………




初めて感じる異様な空気に、今まで抑えられていた恐怖感が溢れる。
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