おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
陽の手にある紙切れは、役所に届けなくてはならない「死産届」だった………………




役所の届は人の気持ちのかよわない冷たい数字だけの決まり事なんだ。



何週から何になり、何日までに、何かをそろえて提出しなさい。



人の気持ちなんて、まるで考慮してくれない。



冷たい紙切れのためにボロボロの心はまた切り刻まれる。







12週からは流産も届け上は死産となり、役所に死産届を提出しなければならない。
その後は適切に火葬してあげることが必要。






見たくない現実を突きつけられた。

どれだけ苦しめれば気がすむのだろう…






二人で考えた。




こんなにズタズタだから、病院に火葬も全部まかせちゃおうって……


こんなにつらい目にあったんだから、もう全て忘れて静かに心を癒そうって………






そうしちゃおうか…
火葬場なんて、もう心がもたないよ………
早く終わりにしちゃおうよ………





でもね、そのときに気づいたんだよ。




あの子が12週きっかりに、空へ帰ってしまったのは私たちにお別れを言いたいから。

あの子が帰ってしまったその時間はあの雨が降った時間だったんだって。



泣いてるくせに、必死に二人をベランダまで呼び出して……

パパとママにさよならをちゃんと言って空へ帰っていったんだって。




だから。


私たちだけ、辛いからって逃げてばかりはいられない。


私たちは言えてないんだよ。
「さよなら」も、「ありがとう」も…




雨の意味を知った私たちは病室で泣きながら決めたよ。




ちゃんと私たちの手で送ってあげるって。



ちゃんと「ありがとう」をいって、あなたを最後まで見ててあげるって。

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