おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
空へ
もうすぐ家につくよ。
ほら。
あそこの川にかかる橋はね、ママが小さい頃よく遊んだんだよ。
見える?あの家は、おばあちゃんとおじいちゃんと過ごしたおうちだよ。
それで………





話はたえることない。

あなたは私の膝の上で寝てる。

聞こえてる?ママの話。

ママのおひざは暖かい?







思い出したんだ。








ママもね、私もね。
お母さんのお膝が好きだった。





まだ記憶もあいまいなくらい小さい頃、私は夜中に高熱を出した。

夜中だから普通の病院はどこも閉まってて…

お父さんが急いで車を走らせて、救急病院まで行ってくれた。

お母さんが抱っこして私を抱えて病院に入って………

私は熱くて熱くて…そしてすごく眠くて朦朧としてた。

ボーっとする意識の中、お母さんは
「ほら、お母さんのとこで寝てていいから。」

って膝で寝かせてくれた。


私は恥ずかしくて…寝たふりをしてた。

お母さんはソワソワ落ち着かなくて、心配してたんだろうな。ソワソワする膝は寝ずらかった…


でもあったかくて…安心していつの間にか寝ちゃった。




忘れてた。

時が過ぎて、反抗期になって、お母さんの手からはなれて、自分もおかあさんになって……


記憶の中に鍵をかけてしまってあった大事な思い出が今、開かれた。






私もね。ちゃんとお母さんに愛されていた。

どうでも良くなんてなかった。





私があなたを、思うその気持ちと一緒。





ねぇ、ママのおひざは暖かい?

いつまでも寝てていいからね。




いつも暖かいひざを用意して待ってるよ。

< 116 / 185 >

この作品をシェア

pagetop