おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
【ビスコが食べたい】


メールに書き込んで返信ボタンを押した。


悩みに悩んで、買ってあった妊婦雑誌の「たまひよ」をめくり今日の食べたい物をようやく見つけた。


ビスコはカルシウムも入ってるし、お腹にたまりそう。
1つ食べて平気だったらしばらくビスコが主食かな?


本当は栄養を考えて食事をとるべきだけど、妊娠初期のつわりの時期は食べたい物を食べたいときにとれば良い。
赤ちゃんには卵黄のうと呼ばれるお弁当があるから気にしなくても大丈夫。

雑誌から得た情報だった。






「ただいま。」


しばらくすると陽が汗をかきながら帰ってきた。
季節はいつの間にか7月も中旬を過ぎて夏真っ盛り。
牛乳に野菜ジュースにヨーグルト…
私が普段食べているものばかり。
こんなに暑いのに重い鞄と買い物袋を下げて歩いて帰ってきたんだ…


「おかえり。」

「ビスコあったよ!イオンの中探しちゃったよ」


あれ?確かコンビニにあったはずじゃ…

陽がビスコを出すのを見て思わず笑ってしまった。





「箱買いしたの?」


子供用の小さなパックを思い浮かべていた私はつわりも忘れて大笑いした。



そこにあるビスコはマンガ雑誌くらいの大きな箱。
しかも2つ。



「え?ビスコってこれだろ?
これだけあれば麻那はしばらく買い出しに行かなくてすむし。」



笑いながらも陽の優しさに尖っていた感情は溶けていった。



「ふふ。1つでいいと思ったのにこんなに食べられるかな。
陽がビスコ買ってきてくれたよ~食べようね~」


お腹の子に話しかけるように茶化すと、陽はなんだよ…と言いながらも嬉しそうに笑っていた。

幸せだった。


その時からビスコは私たち3人の思い出の味になった。



甘くて…少しだけしょっぱい…
切ない味に。








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