おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
「はい。○○クリニックです。」


いつも聞いていた優しい看護婦さんの声だ。


「あの……そちらにこの前まで通ってた山本なんですけど」


「山本さんですね。どうされました?」



さっきの大学病院の機械的な看護婦さんの声とはまるで違う。



その声に安心して、ぶわっと涙がこぼれた。
混乱しきった私が今、一番欲しいのは優しさと安心。



「血が…出血してしまって…色も赤いし、量も多くて………私、子宮が双角子宮だから心配になって…」



まとまりのない感情のままに話す私の話をうん、うんって聞いてくれた。



「出血ですね。心配ですよね。腹痛はありますか?」

優しい声だけど的確な質問を返してくる。

「腹痛は…ないです。」

「垂れてきたり、流れてくるような感じはありますか?」

「違和感はあるけど…ダラダラしてるかんじはないです。」


「では、先生に確認してみるのでそちらで少しお待ちくださいね。眠いようなら寝てても構いませんからね。」


少しでも私を落ち着かせようと優しい一言を加えてくれた。
一旦切り、折り返し電話を待つ。




コチコチ…コチコチ…



時計の音ってこんなに大きかったっけ…
電話を待つ数分の時間が長く感じる。



本当はわかってる…


11週という時期は出血したからといって、特効薬があるわけでもない。
今の医療をもってしても外からしてあげられることは医者にだってない。
できるとしたら、赤ちゃんは無事かどうか確認することぐらい。




それでもただ、何かできることがないか探してあげたい。
やれることはしてあげたい。



すぐに電話が鳴る。

さっきの看護婦さんだった。


「出血はしてるようですが、腹痛がなければ差し迫った状況じゃないことが多いとのことです。
無理に今、病院に来てしまうより安静にしていた方が止血するので様子をみてくださいね。
明日朝一で診察しますから、明日来られますか?」


「はい。」


「明日お待ちしてますね。お腹がすごく痛くなったり、量が増えたらまた電話してください。」






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