おかあさんになりたい。 ~天使がくれたタカラモノ~
ゴロゴロ…ゴロ……



遠くから雷の音が聞こえた。



「珍しいな、夕立ちでもくるのかな?」



病院から帰ってきた私は言われた通りベッドの上にいる。


生暖かい風が窓から流れてくる。

雨が降りそうな、そんな風のにおい。






「ただいま。」

陽が帰ってくる。

メールで赤ちゃんの無事は伝えてあったけど、すぐに寝室によって私の顔をみる。


「とりあえず良かったな。」


「うん。プカプカしてたよ。」


「今度は俺も見に行こうかな?」



危機を乗り越えた安心から笑い合う私たち。
ついさっき会ったばかりなのに、また赤ちゃんに会いたくなった。


元気だよって。生きてるよって動くところをずっと見ていたかった。



「夕ごはん用意するからもう少し寝てな。」

「うん。」



寝転がると、雷の音が近づくのを感じる。

ずっと晴れていたのに、夕立ちがくると急に涼しくなって夏が終わっていく。

1つの季節が過ぎていくんだ。


この子が産まれるのはあと、秋と冬を越えなきゃならない。


「長いなぁ…」

妊娠してからは1日がすごく長い。
特に今日の出来事は永遠に続くとさえ思った。






夕ごはんを食べ、すぐにベッドに戻った。
出血が止まるまでは寝たきり生活の覚悟を決めていた。
ふいに腹を触り、膨らみを確認する。



まだ膨らまないお腹。
お風呂でいろいろな角度から赤ちゃんの場所を探したけれどほとんど妊娠前と変わらない。




「まだ早いかぁ…」




その瞬間だった。






ザアアアアアアア……………
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