少年陰陽師 奥州平泉奇譚
3》咲かない桜の木
頭が重い。
僕は体を起こし、こめかみを押さえた。

掠れ湿った咳。
不安になって八雲の名を呼び辺りを見回した。

僕は今日、初めて夜を明かす寮の僕達の部屋にいることに気付いた。

裏山で遺体が発見されたことを読み取った後の記憶が、まるでない。


僕は、更に不安になって八雲を探しに部屋を出た。

いつ着替えたのかも覚えていない。


パジャマ姿で廊下をフラフラしていると、凛と張りのある声がした。


「おい、どうした?」

──誰?

振り返り見上げた。


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