少年陰陽師 奥州平泉奇譚
『祐。呪詛の源……義経の笛を鳴らし……。

私をあるべき姿に。

あなたの力で』




煙る雨の中に、幻のように淡く薄く浮かび上がった龍の姿は、言い終えると雨の中に溶けるように音もなくスーッと消えた。




包みこむ暖かな声、降り注ぐ激しい雨は、冷たい雨ではなく暖かい雨のように思えた。



僕は、初めて聞く母の声を耳に焼き付け、母の願いを胸に抱きしめた。



自分の思い、流した涙が雨を降らせた




「龍は、一滴の水を手に入れて天に昇りぬれば三千世界に雨を降らし候」




僕は、かの仏典を思い出したんだ。



肌濡らす雨に母の温もりと母の優しさを感じながら、激しく降り注ぐ雨の中で僕は、いつまでも このまま雨に濡れ、母の温もりに抱かれていたいと思った。

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