少年陰陽師 奥州平泉奇譚
桜の木に絡まる薔薇の木。

その下には、呪詛の源があることを告げる母の言葉を思い出しながら、桜の木を見つめる僕に潤が声をかけた。




「あれっ、八雲が一緒じゃないなんて珍しいな」




「かなり粘って起こしたんだけど起きなかったんだ」



「もしかして、毎朝起こしてやってるとか?」




「そうだよ。世話が妬けるよ」



潤と話をしながら、教室へと向かう。




僕は、体が少しずつ重たくなっていくのを感じた。




階段を上りながら、時々足を止め咳き込む僕に潤が尋ねる。



「どうした?風邪でもひいたか」



「先に行って、1人でゆっくり行くから」



潤は、「無理するなよ」と囁いて、僕の鞄をヒョイと持ち教室へと向かった。



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