レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 エリザベスが自分でその作業をしないのは、エルネシア王国内の社交関係にさほど興味がないためだ。自分が遠巻きにされる対象であるのはよくわかっているし、近づいちゃいけない人に近づかないですめばそれでよい。
 パーカーがより分けてくれた招待状それぞれに返事を書いて、エリザベスは仕事を終えることにした。

「居間に戻るけど、ロイをよこしてくれる?」
 運転手兼庭師の助手であるロイを居間に呼ぶ理由なんてないから、パーカーの表情にわずかに疑問が混ざった。
「彼が何か粗相を?」
「いえ、頼みたいことがあるのよ。彼でなければできないこと。お茶と――そうね、彼の好きなお菓子を持ってきてくれる?」
 何か言い足そうにパーカーは少々眉を寄せたが、エリザベスが無言で指を降ると、頭を下げた。

 すぐに扉がノックされる。顔を見せたロイは、エリザベスの前でもじもじとしていた。
「とりあえず座りなさい。落ち着かないから」
「リズお嬢さんが俺に用って……俺、何もしてないですよ?」
 ソファに座らせると、半分泣き出しそうな表情になっている。豪華な家具には落ち着かないようだ。彼の部屋に入れている家具は十分心地いいものであったけれど、この居間にあるほど高価な品は置いてない。

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