レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 銀のトレイが置かれている。サンドイッチの載せられた白い皿と、紅茶のカップ、それに林檎のパイが白い布巾の下に隠されていた。
 エリザベスは、そのトレイを部屋の中に引き入れる。デスクまでそれを運ぶのももどかしくて、扉の前に座り込んで食べた。

「おいし……」
 身体は正直で、一口サンドイッチを齧ると空腹感があっという間に襲いかかってきた。
 サンドイッチを全て食べ、それからお茶を一息に飲み干した。皿の上にはまだ林檎のパイが残っている。
 
 エリザベスは、マギーを呼ぶベルを鳴らした。
「リズお嬢さん、ご用ですか? お怪我は、どうですか?」
 いそいそと駆けつけてきたマギーは、必死にエリザベスの表情を伺おうとした。ここにこもったきり、出てこなかったエリザベスを心配してくれていたのが、その様子から伝わってきて、再び申し訳なさが押し寄せてくる。

「お茶が欲しいの。持ってきてくれる?」
「かしこまりました」
 できるだけ、普段と変わらない様子を心がけながら命じると、ぱっと彼女の表情が明るくなった。
 それから、呼ばれてこの部屋まで来た時以上にいそいそと、彼女は階段を降りていく。
彼女が戻ってきたのは、エリザベスが想定していたのよりはるかに短い時間だった。
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