レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 
「それで、リチャードとお話を進めていいのかしら?」
「進めてくださっていいのだけれど……リチャードが、はいと言ってくれるかどうか」
 レディ・メアリはエリザベスをにらみつけた。つついてはいけないところをついてしまったかとエリザベスは小さくなった。
「まさかあなた何か余計なことをしたのではないでしょうね?」

「いえ、違うの。その……噂でしか聞いていないのだけれど。リチャードのお家のその——彼は男らしい人でしょう? 妻の財産に頼るのを嫌がるような気がして」
 あれから直接彼と話をしたわけではない。だが、以前少しだけ聞いた話。そして、ダスティから聞いた話。
 そして周囲の噂。彼が何を考えているのか、エリザベスにはわかるような気がした。

「何か聞いているの、エリザベス?」
「噂でだけ」
 エリザベスは、婚約者未満の彼に思いをはせる。
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