レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 ラティーマ大陸にいた頃は、馬が主な交通手段だったから常にズボンをはいていた。
 身分のある女性は横座りの鞍を使うのが基本なのだが、エリザベスにとっては面倒でしかなかった。
 エルネシア王国に戻ってからは、着るものはもっぱら膝丈より長いワンピースか裾を長くひいたドレスばかり。せいぜい乗馬服といったところか。

「でも乗馬服で歩いていたら目立つものね、うーん」

 頭を抱えたエリザベスだったが、それでも最終的に一着のワンピースを選び出した。
 
 地味目で悪目立ちしない茶のワンピース。これに黒いブーツを合わせて、鞄は肩から提げていこう。

「こっちの女性ももっとズボンをはけばいいのに」

 ぼやきながら、古い乗馬服を発掘した。これのズボンの裾を短く切ってスカートの下に履いておくことにしよう。そうすれば、万が一の際、下着を見せてしまう醜態をさらさなくてすむ。

「リズお嬢さん、お目当てのクッキー買って来ましたよ!」

 大急ぎで行ってきたらしいマギーの声が響いてくる。エリザベスは決めた衣装をクローゼットの奥の目立たないところへと押しやった。

 乗馬服のズボンはあとで切って、裾をまつればいい。針仕事は苦手だけど、そのくらいはなんとかなるはずだ、多分。
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