オレンジの片想い

「でも今日、陽翔来てるか?」



きょろきょろと辺りを見回す蒼真。その目に探す彼の姿は映らない。

のは当然で。



「ううん、今日はわたしとは別の仕事が入ってて来れないの」


「あー...そうか。残念」


「陽翔も残念がってたよ。今度お互いの都合がいいときに会ってやってね。会いたがってるから」


「そうだな。俺も会いたい」


「会いたいとかきもちわるいな」


「おい」


「あはは、冗談だよ」


「雪葉ー!」



蒼真と談笑していれば、わたしの背後、遠くからわたしを呼ぶ声が聞こえた。身体ごとその声の下方へ向けて、元気よく返事をした。



「じゃあ、行くね」


「ああ」



蒼真の返事を聞いてもう一度顔を見つめ、笑う。そして踵を返して、呼ばれた方へ向かった。





今日、蒼真と話したのは、これが最後だった。
< 276 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop