神様のおもちゃ箱


もしも。



もしも、俺が同い年の子と普通に恋に落ちていたら、こんなに苦しい想いをする事はなかったのかな。

もしも、望乃と付き合ってたら。



普通にデートして、いちゃいちゃして、一緒にこうやってレポート書いたりなんかして。

きっと普通に分かり合えて、普通に喧嘩して、普通のカップルになるんだろう。



未来が透き通って、

将来がみえる。


これが当たり前なんだ。

それも今の俺にはそんなこと、奇跡としか思えない。


当たり前に好きあって、当たり前に将来を見据えられるなんて。

そんなの奇跡以外の何でもねぇよ。



何の障害物もない。

年の差を気にして、虚しくなることもない。

友達の間で公認されて、祝福されて。



きっと幸せだろうなぁ。



――でも、どうやったって、俺の頭の中から、由紀子さんが離れないんだ。

苦しいのに、離れない。


虚しさは、彼女に会えることの代償で。

はっきりしない彼女を恨んでも、会えば許してしまう。

寂しくても、会えた日の幸せで吹き飛んでしまう。



そんな痛々しいことばっかり考えて、どんなに自分を傷つけても。

痛めつけても。


それでも、俺には由紀子さんしかいなくて。

会いたくて。大好きだから。



輪がパーカーを望乃に優しくかけた。

そして、寝言について何も言わないまま、またレポートに取り掛かった。




ごめん、俺、中途半端で

みんなを傷つけて、ごめん。


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