恋じゃなくてもイイですか?


両親の気持ちとしては少し残念に思う所もあるのだろうけど、本人が決めたからと遥くんの意志を尊重しているらしい。


もともと、やりたい事を自由にやらせてくれる両親なのだと桐生くんは笑った。


「でもさ、小さい頃から美術展だの博物館だのそれこそ方々に連れて行かれてたから、芸術を見るセンスは人並み以上なんだろうなぁ。一回、高校生だったあいつを、美大の文化祭に呼んだ時、当時まだ普通の美大生だったハルニレの作品に衝撃を受けたらしくて」


天才だと思ったらしい。


その時から、密かに「田中はるにれ」のファンなのだと____


「で、当の本人が、あんな感じだろ?何となくつかみどころがなくて、どっか異世界から来たような感じ?ハルニレって神出鬼没な所もあって、文化祭の時はタイミングが合わなくて、直接、会うのは今日が初めてになるけど、遥はハルニレに会うのを楽しみにしてたんだ。昔風の木造のアパートっていうのも、そんな所に住む機会、めったにあるものじゃないって言ってたし。ただ___」


「住人に俺と同い年の女の子がいるって聞いた瞬間、表情が曇って……奏ちゃんはかわいいし、いい子だって、俺、太鼓判押してるんだけど……あいつもなかなか頑固だから」


「それじゃあ、私が原因で、やにれ荘に引っ越してくるのもキャンセルする可能性があるってこと?」


「それは、本人次第だから……でも、実際の所どうなんだろ?俺も今は自分のことで手いっぱいだし、あいつも特に部屋を探してる雰囲気はないからなぁ……」


「そんな他人事みたいな言い方しないでよ」


こっちは初対面の遥くんから早速、無視されるっていうのに……


< 77 / 89 >

この作品をシェア

pagetop