恋じゃなくてもイイですか?
「不愛想に見えて、いい奴だからさ」ニコニコしながらフォローに入るものの、嫌いな人にわざわざ優しくしないだろうと拗ねると、桐生くんは慌てた。
桐生くんの乾いた笑いが外の雨音に掻き消される頃、やにれ荘探訪に出掛けていたハルニレと遥くんが食堂に戻って来た。
「遥くん、やにれ荘を気に入ってくれたみたいです!」
ハルニレは満面の笑みで、入ってくるなり、開口一番そう告げた。
「というわけで、記念すべき、やにれ荘3人目の入居者が決まりました」
パチパチとハルニレは手を叩いて喜んだ。
私はそんな嬉しそうなハルニレに微妙な表情を返してから、向かいの席に座る桐生くんを恨めしそうにじっと見つめた。
桐生くんは、そんな私の視線を避けるように立ち上がると、「そうか、気に入ったか、良かった!」と弟の肩を組んだ。
遥くんの入居が本格的に決まった。
梅雨時期には貴重な晴れ間が広がった平日の夕方、会社からスーパーの買い物袋を下げて帰ってくると、玄関を開けるなり、廊下にハルニレが転がっていた。
一瞬、ドキリとしたものの、ハルニレが唐突な眠気に襲われるとどこでも眠り込んでしまう癖は、前々から知っているので、慣れたものだ。
「ハルニレくん、自分の部屋で寝なよ」
揺り起こすと、寝ぼけ眼のハルニレが伸びをしながら、「あ、奏ちゃん、お帰りなさい」と出迎えてくれた。