恋じゃなくてもイイですか?
「桐生くんが喜んでくれたなら、よかったです」ハルニレはいつものゆるい恰好で、腰の辺りで両手を組んでいた。
「ハルニレ、奏ちゃん、どうか弟をよろしくお願いします。あいつは無口だけれど、根は優しくていい奴なんだ」
駅のプラットホームで、いきなり大きな声を出し、桐生くんは頭を下げた。
周りの人がびっくりして、私たちを遠巻きに見ている。
恥ずかしい気持ちになり、「いいから、頭上げて」と桐生くんの腕を引っ張った。
「あいつは女嫌いだけど、奏ちゃんはいい子だからって言い聞かせてるから、奏ちゃんを傷つけるようなことはするなって」
「うん、解ったよ。私も遥くんと仲良く出来るよう努力してみるよ」
今の所、どう転ぶかは解らないけれど、桐生くんもそう言ってくれてる事だし、せめて、普通の会話が出来るよう話しかけてはみよう。
「桐生くん、かなり酔っぱらってますね。お店を出た時は、これ程とは思わなかったんですけれど。元々、結構、強いし」
ハルニレが耳元でぽそりと呟く。
確かに、いつもだったら、飲み会の最後までしっかりとしてる桐生くんが、今日は陽気で千鳥足な気がする。