恋じゃなくてもイイですか?
「終電に間に合えばいいですけど……間に会わなかったら、タクシーで帰ります。今日中に終わさないといけない仕事があるので、遅くなっても帰ります。ただ、財布の中を覗いたら、あまり持ち合わせがなかったので、もしかしたら、やにれ荘の門の前で奏ちゃんを呼ぶかもしれません」
「それなら、ちょっと貸しておこうか?」
「ありがとうございます。助かります」
普段タクシーを使わないので、どれ位のお金が掛かるか解らなかったから、取り敢えず、財布の中から3千円を抜いて、ハルニレに手渡した。
ハルニレはお金を受け取ると、桐生くんと共に、ホームに到着した電車に乗り込んだ。
閉まるドアの向こうでこちらに向かって、手を振る2人を見送りながら、ホームを後にした。
午前0時前にやにれ荘に無事着いた。
人が通るとパッと光を放つセンサー付きの照明が、玄関の下まで来るとぱっと辺りを照らした。
やにれ荘に人のいる気配はない。
建物の中は真っ暗だった。
遥くんもまだ帰ってないのだろう。
バイトが終わるのは0時過ぎらしく、ここ数日、午前を回ったところで部屋の外から、ごそごそと廊下を歩く物音がする。