恋じゃなくてもイイですか?


桐生くんには仲良くなれるよう努力してみるとは言ったものの、遥くんがここに引っ越して結構経つのに、家の中で直接、顔を合わせた事がまだなかった。


帰ってくるのは私が布団に入った後だし、朝は私が会社に出掛けてから起きるみたいだし。


すれ違ってるんだよなぁ、向こうが私に会いたくなくて、わざと時間をずらしているのかもしれないけれど。


改めて客観的にやにれ荘の外観を眺めると、木造の外壁は古めかしいし、夜だと余計に不気味さが増している。


カバンの中の鍵を探しながら、そんな事を思う。


「お化けがでそう」と思ってしまうと、小さな物音にも過剰反応してしまうので、明るい歌を歌って紛らわせる。


玄関の戸を開けて、電気を付けるとようやくホッとした。


一応、何事もなく無事にやにれ荘に着いたとハルニレにメールをする。


靴を脱いだ所で、戸の向こうから「ナーゴ(開けてよ~)」と甘えた声を出す我が家の猫、ミーちゃんの声がした。


「ミーちゃん、おかえり~」


戸を開けると少しの隙間から、太めの体を無理矢理押し込めて、ミーちゃんが入って来た。


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