濱名の保留した答えを待つ週末は、最終審判を控える者のような重苦しい気持ちで過ごしていた。

 外は梅雨の中休みで晴れていたけれど、出掛ける気など毛頭起きなかった。

「また降ってきたよーっ」
「週末だけだったね。さすがは梅雨」

 そう言いながら空を見つめる友人たちと別れ、環は大学構内にある本屋で頼んでおいた単行本を取りに行く。

『へぇ、好きなんだ。俺も持ってる。次出るよな』

 こんな会話を交わしたときは、告白の「こ」の字すら思いつかなかったのに。

 表紙を見ただけで思い出してしまう。

 話したかったな。でも、もう……。

 大通りに面した正面玄関に出てきても、やはり雨がやむ気配はない。

 傘を開いて足を踏み出した環の背後から

「帰るの?」
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